「遺言」と聞いて、別世界の話と思われる方もいらっしゃると思います。
しかし、現実は違います。
実際には多くのご高齢者さま、場合によっては現役世代の方が、いざという時に備えて「遺言書」を作成しています。
なぜ作成しておくのか。理由は明確です。
遺言により自己の各財産の帰属先を明確にしておくことで、相続人間の遺産分割協議(財産を分ける話し合い)が必須ではなくなります。
民法上は、あくまで相続分の「割合」が決められているだけです。
遺言書がない場合、財産の「帰属先」を決めるためには、法定相続人全員の合意ができるまで遺産分割協議をしていくことになります。
協議を進めるにあたっては、財産状態を明確にしておく必要がありますし、全員が内容に合意するとなれば、容易ではありません。
相続人がそれぞれ遠方にお住まいの場合ですと、なおさらです。
特にお付き合いが長い間疎遠になっている場合は、話し合いがスムーズに進まないケースも多くあります。
協議がまとまらない場合は、家庭裁判所において解決を図ることになります。
ただ、これについても争いが深刻化して、審理が長期化する場合も多くあります。
遺されたご家族の間で不和が生じることがないよう、遺言書を作成することで事前に準備しておくことが可能です。
例えば、遺言書がない場合、お子さまのいらっしゃらないご夫婦のケースですと、ご夫婦で築き上げた財産であっても、そのすべてが配偶者さまに相続されるわけではありません。
法定相続人としては、配偶者は常に相続人となりますが、お子さん(第一順位)がいらっしゃらない場合は、親又は祖父母(第二順位)や兄弟姉妹又は甥姪(第三順位)も相続人となります(民法889条)。
この場合、配偶者さまとご兄弟の間で遺産分割の話し合いが難しくなることが多く、最悪の場合は財産をめぐって争いになる可能性もあります。
ご夫婦の一方がお亡くなりになった後、配偶者さまが相続に関して困惑することがないよう、ご夫婦がお互いに遺言書を作成し、未来の相続に向け準備しておくことが安心です。
このように、遺言書には、家族間の予期せぬ紛争を防ぎ、遺されたパートナーやご家族が相続で思わぬ苦労をしないようにするといった「予防法務」の側面もあります。
弊所は、お客さまを取り巻く状況や将来へのご要望をしっかりとお伺いし、ご自身の思いをカタチにするお手伝いをさせていただきます。
「遺言書」を作成することで、ご自身の希望する「未来」や「思い」をカタチにしてみませんか。
遺言書においては、「遺言執行者」を指定しておくことにより遺言の内容をスムーズに実現することができます。
「遺言執行者」については、ほとんど聞いたことがないという方もいらっしゃるかもしれません。
遺言執行者の権利義務については民法1012条に規定されていますが、イメージとしては、遺言内容の実現に向けての「進行役」です。
遺言は内容が実現されてこそ、実のあるものになります。
実現には財産の名義変更などの具体的な手続きが必要であり、遺言執行者は①相続人②遺言の対象となる財産の状態(不動産や預貯金などの現状)をそれぞれ明らかにし、実際に分配する手続きを進めていく役割を担います。
遺言執行者の指定がなくとも、相続人のお一人がまとめ役となって手続きを進めることも可能です。
ただ、この場合、まとめ役の相続人にかかる負担も大きいですし、他の相続人から理不尽な不満が出ないとも限りません。
そもそも法務局や銀行での手続きには、戸籍の取得から始まり、たくさんの書類を整えることが必要であり、専門家でないとスムーズにいかないこともあります。また、その多くは平日に窓口に出向いての手続きです。
遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者のみで手続きを進めることが可能ですので相続人がご多忙であったり、海外にお住まいの方がいらっしゃるケースでは、手続きにかかる手間やわずらわしさを軽減することができます。
そして、遺言執行者は、特定の相続人の代理人ではありませんので、公平・中立な立場から業務を進めます。
第三者的立場で手続きを進めることにより、相続人の間において疑念や不公平感を生むことなく、財産の分配をスムーズに進めることが期待できます。
遺言執行者として、国家資格者である行政書士をご指定いただくことも可能です。
遺言書作成の際は、ぜひ遺言執行者の指定もご検討ください。
2018(平成30)年7月に相続法が大きく改正されました。
改正法の多くが2019年から施行されています。
分野としては大きく6分野が挙げられます。
① 配偶者の居住権保護(配偶者(短期)居住権の新設)
② 遺産分割に関して(生前贈与の持戻し計算、預貯金の一定額引出し)
③ 遺言制度に関して(自筆証書遺言の方式と保管)
④ 遺留分制度に関して(遺留分減殺を現物返還から金銭支払いへ)
⑤ 相続の効力に関して(法定相続分を超える部分の登記等の必要性)
⑥ 相続人以外の保護(相続人以外の貢献度を考慮)
簡単に列挙しただけでも、幅広い改正となっています。
「相続法」としては、約40年ぶりの大きな改正です。
これについては、過去に作成された遺言についても影響があるといえます。
相続開始(亡くなった時点)が施行日以後であれば、原則として改正法が適用されることになるため(民法附則2条)、過去に作成した遺言であっても相続開始が施行日以後の場合には、「遺留分」が金銭債権化されるなど、気を付けておくべき点があると考えられます。
なお、相続する割合(法定相続分)については以前と変わりません。
相続人 | それぞれの相続割合 |
---|---|
配偶者のみ | 配偶者100% |
配偶者と子 | 配偶者2分の1、子(全員で)2分の1 |
配偶者と父母 | 配偶者3分の2、父母(全員で)3分の1 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者4分の3、兄弟姉妹(全員で)4分の1 |
※子、父母、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。
遺言作成の段階においても、いざ「相続」という段階においても、調査が必要な事項は基本的に同じです。
①「人」の調査(相続人を確定する)と ②「モノ」の調査(財産の範囲とその状態を明確にする)が必要です。
①については、戸籍等の調査が必要となります。
相続発生時には、まず誰が相続人(権利・義務者)であるのかを確定させる必要があり、遺言書作成の場面でも誰が遺留分権利者か確定する意味でも重要です。
②については、固定資産税の納税通知書や通帳などの情報を手掛かりに、登記事項証明書の取得や金融機関に対する残高照会などで、詳細を把握していくことになります。
また、マイナス財産(借入金)について把握しておくことも必要です。
弊所は、お客さまの現在の状況や未来への思いをしっかりとお伺いし、安心できる「遺言書作成」や「遺言執行者」として相続手続きのお手伝いをいたします。
弊所では、お客さまそれぞれのご意向を大切にしております。
些細な疑問でも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。
遺言・相続に関する大まかな流れは次のとおりです。
相続関係者の方への通知、相続財産目録の作成及び相続財産の名義変更などを行います。
※ 不動産の登記が必要な場合は、ご要望に応じて司法書士と連携いたします。